⑳鍼灸経絡治療による腎臓機能の改善
 人体のすべての構成要素である細胞、ホルモン分泌、免疫機能などは
自律神経(交感・副交感)によって支配されており、特に人間の場合は様々な感情によっても大きく影響を受けます。 この影響を受けた内臓などもここに存在する独自の神経細胞の判断を加えて調整され、その情報を再び脳髄、脊髄に返していく、という循環が繰り返されています。
 漢方の基本理論として、
経絡という6臓6腑の治療点(ツボ)の連続線としての皮膚上における流れがあります。
これは各内臓及び組織に存在する、独立的な小さな脳に例えられる、自律神経的な神経組織の皮膚上における反応点の流れとして表れているものです。
このように各内臓の自律神経における、内臓体壁反射線、点ともいえる流れは、人体の縦線として表され、基本的に左右対称に示されていますが、
実際には全身に網の目状に張り巡らされており、実際の鍼灸刺激による効果はあらゆる方向、つまり各内臓、組織に及ぶものです。
例としてあげれば腎臓の変調が現れた場合でも、腎臓だけに注目するのではなく、他のあらゆる臓器にも注目して、全体の調和をとっていく考え方が重要です。
次に、体を流れる経絡の基本的な流れを図示しておきます。
経絡の基本的な流れ 
   経絡図の番号の説明
   ①太陰肺経    ②厥陰心包経(主に腹、胸部の内蔵全体を示す)
   ③少陰心経    ④陽明大腸経
   ⑤少陽三焦経(主に背中の筋の状態を示し、熱源をも表わす)
   ⑥太陽小腸経   ⑦少陰腎経
   ⑧太陰脾経(胃を助ける作用を示し、血糖とも深い関係がある)
   ⑨厥陰肝経    ⑩陽明胃経
   ⑪少陽胆経    ⑫太陽膀胱経
   ⑬任脈      ⑭督脈
    なお、これらの経絡は単独で成立するのではなく、すべて密接な関係を持っています。
体内外のどこに変調があっても、必ず皮膚上における特定の経絡上の特定されるツボに反応が強く現れ、それについで関係の深い経絡上のツボにも反応が出て、結果的には6臓6腑のすべてのツボの反応が出ます。
つまり、まずはすべての経絡、ツボの状態を調べる必要があります。
ここにおいては、腎臓の変調がある場合ですが、まず腹診といって多くの経絡が通る腹部を主に指圧で各内臓の様子を感じ取り、ここに至った本人の体質、内外の環境を調べて、どこの部分の変調から始まって、腎の弱りをもたらしたかを追求していきます。
さらに脈診で血液の循環を調べ、手・足・首の経絡の状態を見て、統合的に判断します。
図の説明
大阪枚方市の福本鍼灸院の腹部の経絡

①胆経(胆のうの状態や全身の筋肉の様子を示す)

②脾経(胃に対する影響や血糖状態を示す)

③胃経(胃の状態や免疫機能も示す)

④肝経(肝臓や筋肉、目の状態を示す)

⑤腎経
(腎臓、副腎、血液、白血球による免疫状態も示し、全身の活性度も示す)
⑥任脈(心臓、胃、腎臓、小腸等の調子を表わす)


   腹部において重要な情報は、その人の本来持っている遺伝的体質、つまり先天の気としての腎の様子がある程度わかるということで、この次にその人の後天の気、つまり生活環境全般が胃経、脾経よりわかり、
その他の経も同時に見ることで、体内・外情報がより詳しく浮かび上がってきます。
次に重要なのが手の経絡を調べることですが、まず手の経絡図を示しておきます
図の説明
手の経絡図

①小腸経(小腸の調子と同時に全身の関節や免疫力に深い関係があります)
②三焦経(全身の熱源と考え、背中の筋肉と深い関係があります)
③大腸経
(腸内細菌のバランスが副腎、腎臓の出す各種ホルモンの活性化を左右するという重要な役割があります)
④肺経
(尿素窒素・尿酸・クレアチニン等のタンパク質の老廃物を水分と共に少量排出し、
腎臓の作用を助ける面もあります)
⑤心包経(心臓の働きを助けると同時に、内臓全般を調整する作用がある)
⑥心経 (心臓の作用を調整して全身の血流を整える)


手には6本の経絡が通っているのですが、
体のあらゆる組織の自律神経の反応が最もよく表れる所で、治療点として有効かつ効果の高いツボがたくさんあります。

この次に足の経絡を調べる必要があります。
  足の経絡図を示します。
足の経絡図 width=

①肝経(胃の変調による結果が出るところ、
    逆に腎にも影響が及ぶところであり
    全身の筋肉、生殖器官、目にも関係があります)
②腎経(脳髄、脊髄を基本として、
    運動神経、自律神経、ホルモン分泌と
関係が深く、排泄機能の中心でもあり、
    喉、耳、目とも結びつきが深い)
③脾経(胃の消化物を小腸、肝臓へ、
    そして血液として
全身に送る循環の役割をする)
④膀胱系(腎とも深い関係にあり、なおかつ背中全体の調整をする)
⑤胆経(堪能の調整とともに全身の筋肉のバランスをとる)
⑥胃経(胃の調整を行うとともに、続く腸にも影響を及ぼし、
腎の能力向上に関係する腸内細菌のバランスにも大きく力が及び、体内外の免疫力にも深く影響する)


足にも6本の経絡が通っていますが、腎の変調がもっとも強く表れる腎経をはじめとして
これを助ける胃経、脾経の他3経が通っています。
足の膝以下の所には、特に腎を助けるツボが多く存在し、これに鍼灸をするとより良い効果が出ます。
以上より、鍼灸治療の順序として
まず腹診をして、腎が変調した体質、環境(ストレス等)を6臓6腑の経絡上の変化及び
ツボの変化で探り、なおかつ手・足の経絡、ツボの変化を見て脈診なども加えて
精度を高め、自律神経の強い反応の出る手足のツボを中心として、
鍼灸等で刺激を強弱に与えて、交感・副交感神経をバランスある状態に近づけて、
腎臓内により血液をどんどん送り込むようにし、機能向上に向かわせます。

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