交通事故による傷害に対し、鍼灸治療は交通事故保険が適用されます。
①交通事故などによるむちうち症
交通事故によって、首が前後に急激にまげられる事によって、ここを構成する椎骨・靭帯・神経・筋肉などに変調が起こり、痛み、神経症状がでる状態をいう。
背骨の中でも特に首の部分は重い頭部をのせていたり、前後・左右の動きができるような構造のため、外部からの衝撃に対しては弱い面がある。
その為、交通事故の強い衝撃で脳脊髄液減少症をおこしていることもある。
症状としては、一般的には、首の椎間板をつつむ包や、前縦靭帯、後縦靭帯、棘間靭帯、項靭帯や各種筋肉の炎症による痛みであるが、程度が重い時は、首の骨の左右を通って頭部に進む椎骨動脈の変調によるめまいや頭重感、又頚部の左右には、主に交感神経が多く分布しているために、この影響によってのぼせ、目・耳の変化、手足のしびれ感、心臓の不調なども表れてくるがレントゲンやMRI、CTなどで異常を発見できないことがある。 次に神経根といって、頚髄から枝分かれした神経の根元が炎症や出血によって圧迫された時に、主に腕における皮膚感覚の変化や、筋肉の力の低下が起こることがある。又、首の脊髄そのものが、圧迫・障害された時は腕や足の不全、尿失禁などが起こることがある。
しかしながら、神経根や頚髄の損傷には加齢による骨の変形や、骨棘の成長というものが関係していることも多くある。治る期間は、一般的には1~3ヶ月、又は6ヶ月、あるいはそれ以上かかることもある。
交感神経(①)は全身の内臓に関与し、首の運動知覚神経(②)は主に腕・首・肩・後頭に関係する。
なお、副交感神経は首部においては明確な分布はないが、別名迷走神経といわれるように多少の存在はある。
交通事故後の症状の経過と精神症状
症状が軽い時は、交通事故直後の痛みや首の組織を保護するための硬直が起こり、1~3ヶ月くらいで元に戻っていくが、事故後の痛みが中程度以上の場合や、中年以降において、骨の劣化、骨棘の形成等によって神経組織の圧迫・障害が起こったときは、全身症状が表れたり、治癒期間が長引くこともある。
又、その人の性格や、既に持っている色々の症状によって背骨についていえば、すでに左右方向に湾曲していたり、症状が3ヶ月以上続いた時には、人によって右の肩甲骨の下 あたりにコリを感じるようになり、結果その辺りの背骨が少し右に引っぱられる事により、湾曲を生じる。
続いて、これを治そうとする力が作用する結果、肝臓に血液が集まるようになり、肝臓と血管が多くつながっている胃の血液量が少し減るので、胃の不快感や食欲不振を起こしてくることもある。 次に、時には、交通事故により首に加わった力によって脳と脊髄を浮かせてこれを守っている脳脊髄液に変調をきたして、脱力感・不快感・疲労感を生じる事もある。
この症状は脳脊髄液減少症にも通じる。
漢方理論による鍼灸療法の特長 (主に経絡)
漢方理論によると、身体の基本は6臓6腑より成り立っている。
普通、内臓は5臓5腑、つまり臓は肝臓・心臓・腎臓・肺臓・膵臓、
腑は胆のう・小腸・胃・大腸・膀胱である。
しかしながら漢方独特の考え方により、三焦と心包が加えられている。
三焦とは、食物を消化吸収して栄養として全身をめぐらせ、結果生じた不用物を体外に排出させる機能をいう。
又、心包とは、全身に栄養を含んだ血液を循らせる働きのある心臓の生理作用をよりスムーズに助ける機能をいう。
以上の6臓6腑の気血がめぐるコースが経絡という全身をめぐる縦の流れであり、基本的には左半身に12本、右半身に12本、それと正中線をめぐるものに、任脈と督脈がある。合計26本の流れが全身をめぐっている。
例えば、むちうち症を発症した時、
首や全身の変調は特定の経絡上の特定のつぼに必ず反応点として表れてくるのです。
特に強く反応の出る場所としては、体幹部より遠い、手では肘より下、足では膝から下に強く表れます。
生理的に重要な部位である首の変調の反応が、なぜ体の末端である肘より下、膝より下につぼとして強い変調をあらわすのでしょうか。
一つの生命体である人間の重要な部分を収めた頭部・首・胴体部分に変調が生じた時、これらを守るために、末端に変調作用を強く生じせしめて、 中枢部の損傷をなるだけ少なくするという生存の法則があるからです。
首を通っている経絡について
①督脈
②任脈
⑤督脈
それでは、首の損傷の場合、何経のどのつぼに強い反応が出て、なおかつ治療点として有効であるか、どのように調べればよいのでしょうか。
そこで腹診という事が出てくるのです。
腹というのは、その人の体の調子がすべて表れる場所です。
① 心臓の反応点で首部の交感神経に変調を生じた時、心臓の調子の程度が表れる。
この調整に
左肘より下の心包経の反応点をとる。
また、頚椎そのものが変調している時にも反応が強く出るので、
この時は顔面の督脈上に反応がでるのでここにとる。②肝臓の反応点であり、ここにこりを生じている時は、
頚部における靭帯や筋肉に変調が生じている時で
また自律神経ストレスを受けた時にも反応を生じる。
このような時には、
右肘より下の心包経に反応がでる。
③・④ ここに反応が生じている時、
自律神経不調による胃の不快感が生じている時である。
特に
頚部前面の胃経上には自律神経調整の反応点が強く表れる。
又、
足の膝より下の胃経にも反応がでる。
⑤へその右側の反応点は、漢方でいうところの腎、つまり主に副腎の働きを表すところで、交通事故等で首の損傷を受けた時、これを修復したり、精神的ショック等で体力を消耗するものなので、必ず強い反応を示すところです。
又、耳に腎の影響が出るので、ここに不調が表れることもあります。
腎の反応は、
右足の腎経に反応がでます。
又、腎は水ともいわれ、脳脊髄液の流れにも深く関わっています。
⑥ へその左側に反応のでる時は、泌尿系に変調のある時です。
首部の自律神経が変調した時、小便に関する不調がでる事があります。
この時は、
左手の肘より下の大腸経に反応がでます。⑦ へその下あたり、下腹部の上あたりに反応のでる時、これはいわゆる小腸の反応点で、内臓の小腸の様子が表れると共に、全身の関節の調子のでる所で、
首部においては頚椎と頚椎の間にある椎間板の変調の表れるところです。
ここで重要な事は、背骨というものは骨単独で正しく保たれるものではなく,これを支える筋肉によって保たれているという事です。
この背骨を支え、正しく保っている筋肉の状態は、漢方でいうところの三焦経によるということです。
つまり、小腸経三焦経のバランスをとる事が非常に重要となってきます。
そこで、関節を調整する小腸経の反応点は手の肘より下に強く表れ、骨を支える筋肉の反応点は
手の肘より下の三焦経に強く表れます。以上より、首の障害の場合でも、まず腹診をする事により、その人の身体と精神の状態を読み取り、その程度に応じて主に手足の要穴に鍼を施す事によって、早期の治癒を計っていくという事です。
又、病院における治療と併用する事によって、より早期の治癒が望めると共に、治療後の不快感を早くとる事にも大変有効です。
保険について
交通事故による傷害に対し、鍼灸治療は交通事故保険が適用されます。
保険会社が交通事故の治療に鍼治療を認めれば、患者さんの負担ゼロで治療を受けられます。
現在では、多くの保険会社が鍼灸治療を認めていので、一度当院でも、保険会社でもよいのでお問い合わせください。
また、交通事故保険は、他の医療機関に通院していても、鍼灸治療との併用も認められています。
来院時における服装
首が見えやすく、手が肘まで上がる、足が膝まであがる、お腹が出やすい服装。
その他の交通事故後遺症
骨折や捻挫のためギプスをし、その後はずしたが関節や 筋肉の動きが悪い時、その個所の前後の経絡上の要穴に鍼を施すと、早期に回復します。
鍼によるつぼ刺激により、神経系が活性化するため、 それに連動して血流がよくなり、組織がより健全化するためです。
なお、当院の鍼は衛生上、使い捨て鍼を使用しており、常時新品、無菌のものです。